2025年度第2回タトゥー文化研究会
開催日時: 2026年1月11日(日)14時〜16時
発表者:松嶋冴衣(東北大学文学研究科 広域文化学専攻 文化人類学専攻分野博士課程後期3年の課程)
発表タイトル:「日常生活圏からの身体的移動をともなう「消えるタトゥー」実践―台湾に留学した日本人大学生たちの語りを事例に」
会場:ホーユーヘアカラーミュージアム
〒461-0023 愛知県東区徳川町903(徳川園そば。詳しくはこちらをご覧ください)
主催:タトゥー文化研究会
共催:「身体性を通じた社会的分断の超克と多様性の実現」(JSPS学術知共創プログラム)
「東京外国語大学AA研幹研究人類学「社会性の人類学的探究:トランスカルチャー状況と寛容/不寛容の機序」」
「科研学術変革領域(A)トランスフォーマティブな顔身体/変容過程のフィールド実践」
発表概要
本発表では、台湾に留学中の日本人大学生たちによるタトゥーシール、ヘナタトゥーといった「消えるタトゥー」の実践を取り上げ、海外で「消えるタトゥー」実践がおこなわれるとき、どのような要因がその背景となっているのかを考察した。従来海外滞在中に実践される「消えるタトゥー」は非日常における非日常的行為として理解される傾向にあったが、事例の分析を通して、実践者の個別的な日常に存する社会規範や社会関係を基軸として「消えるタトゥー」がおこなわれていることを報告した。
「タトゥー」という研究の切り口は、「身体性を通じた社会的分断の超克と多様性の実現」に深く関連している。2025年12月26日の厚生省の通達により、再びアートメイクとタトゥーの区分が注目を集めるようになっているが、美容行為なのか芸術行為なのか、また施術する技術者と施術を受ける主体の視点のどちらに着目して語るべきかについて戸惑いが見られる。
一口にタトゥーといっても、侵襲性の高いタトゥーと皮膚の表面にとどまるタトゥーを選ぶ人にわかれることを松嶋氏の発表は示唆する。松嶋氏は学部生時代より、ジャグアタトゥー、コスメタトゥー、タトゥーシールなど、消えるタトゥーを選択する人々に着目して研究してきた。台湾に短期語学留学した日本人学生へのインタビューをもとに、タトゥーシールがその場の「ノリ」でおこなわれたとしても、図柄の選択、部位、施術を受けたあと隠すかどうかについて、身体加工に対する日常的な規範が反映されていることを報告した。
参加者を中心に実践の解釈について活発な議論が交わされ、行為の多様性が改めて確認できた。研究会終了後、ミュージアムの好意で、館内を案内いただき、さまざまな髪型と髪の色が試せるシミュレーション、コスメタトゥー体験などをし、装いの可能性と多様性を実感することができた。
研究会概要
名古屋にあるホーユーヘアカラーミュージアムにおいて、2025年第2回タトゥー文化研究会の公開研究会を実施した。通常、研究会は会員のみで開催しているが、今回は「身体性を通じた社会的分断の超克と多様性の実現」ほかからの助成と、ミュージアムの協力を得たこともあり、公開かつハイブリッドでの実施となった。
ホーユーヘアカラーミュージアムでは、2025年9月9日から11月30日まで企画展「パラリンアート展」を催すなど、身体性を通じた社会的分断の超克と多様性を重視する姿勢を明確に打ち出されています。また、2025年からホーユー株式会社が「ルセナ コスメタトゥー」(LUCENA オフィシャルサイトhttps://www.cosmetat.jp/)を試験的に発売していることも大きな理由となった。プロジェクトの主旨や発表テーマと重なることからお願いしたところ、セミナー室をお借りすることができた。
2時から4時までのハイブリッド研究会の後、ミュージアムの館長である梶原秀一さん、OBの中園陽久さんのご案内で、館内2階の日本の毛染め・ヘアカラーの歴史が辿れる常設展を見学した。ミュージアム2階には「髪型や髪の色が違った色々な自分を疑似体験できる、意外な自分に出会える画像シミュレーター」や「パーソナルカラー」「髪色シミュレーター」などがあり、実際に体験してみることで、髪を中心とした身体変容のさまざまな可能性を認識することができた。次いで、1階には、コスメタトゥー体験コーナーが設けられており、現地出席者がコスメタトゥー体験を楽しんだ。
