学術講演会"Interpersonal Entrainment in Music Performance"
日時:10月4日(金)16:00~18:00
場所:東京大学駒場キャンパス 12号館1224教室
講演者:
Professor Martin Clayton(Department of Music, Durham University, UK)
Dr. Simone Tarsitani(Department of Music, Durham University, UK)
概要:
音楽は、あらゆる社会において人と人との相互作用を促進する文化的営為である。社会的分断の超克を目指す本研究プロジェクトにおいて、音楽の社会的役割に関する理解を深め、人々が音楽を介して相互作用する具体的場面の計測および解析に関する手法を理解することは、本プロジェクトの遂行にとって重要な意味をもつ。
そこで本学術講演会では、民族音楽学を専門とし、音楽を介した人々の相互作用について数多くの論文を発表している英国ダラム大学のMartin Clayton教授、ならびに民族音楽のオーディオビジュアル・アーカイビングを専門とする同大学のSimone Tarsitani博士をお招きしてご講演を頂いた。Clayton教授の講演では、音楽演奏における対人間の同期現象に着目し、アフリカ、アジア、南米、日本など多様な地域の音楽的特徴について、その共通点と相違点とを比較した。さらに、音楽演奏の映像および音声より、視聴覚情報を介した演奏者間の無意図的な引き込みが生じている事例、儀式的演奏のグループ間における相互作用の事例等が紹介された。続いて、Tarsitani博士の講演においては、視聴覚民族音楽学(audiovisual ethnomusicology)の歴史的発展の概略ならびにフィールドワークのツールとしての視聴覚情報の記録について、東アフリカの宗教的儀式を具体例に挙げて、記録対象者への配慮とともに、集団ならびに個人のパフォーマンスについてそれぞれの記録精度を高めるための留意点について詳細に説明された。更に、参加者との間で、音楽を介した人々の社会的協調について更に検討を進めるための方法論に関する議論が行われた。
工藤和俊(東京大学大学院総合文化研究科)